幕末怪異聞録




走ること約半刻。


既に着いてもおかしくない頃だが……


「ーーおい、狼牙。迷ってないよな?」


「ーーーま、迷ってなんかないよ!」


「そうか……。だが、この道を通るのは二回目だぞ?」


「……。」


「ーー迷ったな……。」


「ーーごめん。」


不慣れな地である上に、碁盤目の街並みが更に道を分からなくしたのだ。


「ごめんで済んだら新選組なんていらねぇんだよ!!」


「うわぁあ!ごめんってば!あの女将の言う通りに来たらこの辺りなんだよ!」


「ったく、急いでいるというのに……。」


どうやら嫌な予感というのはこのことだったようだ。


誰かに聞こうにも運悪く人っ子一人いない状態である。


(暗殺の現場には完全に間に合わないだろうな……。)


諦めきれず何かないかと辺りを見渡していた矢先、突然強いにおいがした。


「ーー!!」


「ーー時雨!」


鼻の利く狼牙もどうやら気づいたようだ。



「ーーーー血の臭いだ。」