幕末怪異聞録




「お前知らねえのかよ!京に住んでんだろ!?」


『おいらこの辺りしか遊ばねえんだもん。それに、店の名前なんて一々覚えてねえ!』


狼牙の少し馬鹿にした様な言葉にコンは少しムッとしながら応えた。


「……。」


時雨は少し考え、「よし!」と言って勢い良く立ち上がった。


「とりあえず、女将に聞いてみるか。もう日が暮れてしまった。一刻程しか猶予はないからな。探すぞ。」


コクリと頷いた二人も立ち上がった。


「じゃあ、コンは此処で待ってろ。私と狼牙で聞いてくる。」


『うん!』


元気良く返事をしたコンを見た時雨は狼牙と共に部屋を出て行った。





「ーーーで?俺に何か言うことでもあるのか?」


襖を閉めた時雨に狼牙は声を潜めて言った。


そんな狼牙に時雨は些か満足そうな表情をした。


「何故そう思った?」


「何故って……。何もなかったら“聞いて来い!”って言って、俺一人に行かすだろ?わざわざ時雨が一緒に来たってことは、コンに聞かれたくない“何か”があんだろ?」


それを聞いた時雨はクスッと嬉しそうに笑った。


「正解だ。お前も中々察しが良くなったな。」


そこまで言うと時雨は顔を引き締めた。


「ーーーコンには気を付けろ。」