幕末怪異聞録




コンは辺りを伺い、時雨に顔を近づけてから話し始めた。


『おいら、よく龍馬に遊んでもらってて、仲が良かったんだ。勿論、龍馬が遠いところに行くのも知ってる。だけど、ここいらの妖の中では噂になってるんだ。“坂本龍馬が暗殺される。”って……。』


そこまで言ったコンは少し涙ぐんでいた。


「ーーんだよ!噂じゃねぇか!!大体あいつ、今京にいないじゃねぇか!」


嘘だと言う狼牙は、コンを励ましたのかもしれない。


時雨も少し笑みを浮かべ、頷いた。


しかし、その顔は些か納得していないようで、考え込んでしまった。


「何だよ、時雨。考え込んでさ。」


「いや、確かに龍馬は京にいないが、火の無いところから煙は上がらない……。何故その様な噂が立っているのかと思ってな。」


『……。』


時雨の言葉に再び不安気な表情を浮かべたコン。

それに気が付いた時雨は慌てて笑顔を見せた。


「そんな顔をするな、コン。私がついている。悪いように事は進ませないよ。」


「俺もついてるしな!」


「お前は足で纏でしかないがな。」


「ひでぇ!!」


『クスッ…!』


時雨と狼牙のやり取りを見て思わず笑ったコン。


「そう。お前は笑っていればいいんだよ。」


時雨は慈愛に満ちた表情をしていた。

そんな時雨の表情に安心したコンは大きく頷いたのだった。