段々向かっ腹が甦ってきたのか永倉は声を荒げた。
「山南さんが脱走したのだって土方さんが山南さんの話をろくに聞かねえで無理に屯所を西本願寺に移したからだろ!?」
「山南さんの本心なんてわかんねぇだろ。」
また始まったと言わんばかりに相槌を打つ原田。
今まで原田は永倉の愚痴を嫌と言うほど聞いてきたのである。
「河合が切腹したのもよぉ!」
「あ、それは俺も納得いかねぇな。」
「だろう!?
河合は隊費管理の責任者だったが、女作って浪費していたのは近藤さんだ。それの苦言を言ったから河合を粛清対象にするのはお門違いってもんだろ!」
“河合”とは河合耆三郎のことであり、新選組の勘定に所属し、慶応二年二月二十五日切腹したのだ。
その切腹の理由が近藤の度重なる女性関係の浪費に、隊費管理の責任者として難色や苦言を呈したために、排除対象人物とされ、粛清に進展したのだ。
その頃、隊の中で近藤の浪費の件等、近藤について好き勝手言っている輩が多かったため見せつけの意味もこもっているのだろう。
そんな土方の意志を汲み取ってもやはり納得がいかなかったのだ。



