幕末怪異聞録




「言いたくないならかまわんが……。
憂さを溜めすぎるなよ?」


「何のことだよ。」


口元をひきつらせる永倉に時雨はニコッと笑った。


「“近藤さん”によろしくな。
あ、“土方”……にも、かな。」


“近藤さん”と“土方”をあえて強めに言った時雨はそのままさって行った。


原田と永倉は時雨の後ろ姿を見たままポカンとしていた。



「―――時雨のやつ、全てお見通しって面だったな。」


「あぁ。俺が近藤さんに不満を持ってることに気付いていたな。」


永倉は「はぁ……。」とため息をつき、頭をかいた。


「だがよ、土方さんには不満ねぇぜ?」


「“今”はってことだろ?」


「ん?」


「山南さんが切腹した時か……?いや、河合が切腹した時もかなり怒ってたなお前。」


「――両方同じくらい怒ったさ。今でも胸くそわりぃ……。」


そう言って永倉は足元の小石を蹴った。