幕末怪異聞録



鼻歌交じりに歩く時雨だが、外は寒く、愛用の襟巻きを鼻までうずめた。



「―――時雨?」


「?」



突然名前を呼ばれたもんだから辺りを見回した。


「やっぱり時雨じゃねぇか。」


「あ!!新八と左之だ!!」


久しく見る顔に時雨は嬉しかったのか、笑みを浮かべて二人の元へかけていった。


「――って、オメェ酒くせぇな……。どんだけ飲んだんだ?」


「……。数えきれんな。」


何故か自慢気な表情を浮かべる時雨に永倉と原田は苦笑いをした。


そんなことよりも二人がどうしても気になることが一つあった。


「お前、髪の毛黒くねぇか?」


そうなのだ。

時雨の髪は黒く、下の方で赤いリボンで一つに纏めていた。


二人が声をかけるのを躊躇ったのもこれが原因だった。


無論、坂本らも初めて見たときは同じ反応を見せた。