幕末怪異聞録



「どっちでもいいの!!」


そう言って熱燗を徳利ごと飲む時雨。


「火傷するぜよ!」


「熱くないもん!」


ムッとする時雨は年端もいかない娘に見える。


しかし時雨の周りに転がる空の徳利の山……


片付けられた物も多くあるが、時雨は一人で軽く一升は飲んでいた。


そんな時雨が急に立ち上がった。


「龍馬、私はもう眠いから帰るぞ。」


「帰るがか!?泊まればいいぜよ。」


「いや、お龍と水入らずでよろしくやってくれ。」


くくくっと笑う時雨にそばにいたお龍は頬を赤くした。


「それじゃあ儂が送るぜよ。」

「かまわんよ。近いし平気だ。」


立ち上がろうとした坂本を制した時雨はニコッと笑った。


「―――明後日京を発つんだろ?見送ってやるからな。」


「分かったぜよ。楽しみに待っとるきに、今日は気を付けて帰るがじゃ!」


「うん、今日はありがとう。それじゃあお休み。」


そうして時雨は京の闇に紛れたのだ。