『あいつはまだあの男を忘れんのか。』
「忘れてない。あれはもはや執着だな。」
あの男とは時雨の亡き夫、陽斗のことである。
『三年前帰ってきたとき、時雨の心に些か変化があったのだが……。』
「それは私も感じたが……。気のせいだったのかもしれぬな。」
『気のせいか……。』
「もういいか?いくら時雨が可愛いからといって心配しすぎるな。」
そう言うと時子はほうきを持って表に戻っていった。
『時はまた流れ、大きく変化する。時雨よ、また遠くへ行くなよ……。儂が守れる範囲にいろ。』
そう呟くとアサツユはフッと消えてしまった。
たが、アサツユの願いは叶うことなく時が流れて行くなど本人ですら思っていなかったのだ――――――………



