幕末怪異聞録



そんな事に気を止めない時雨は続けた。


「この前腹、蹴っちゃってごめんな?痛かったろ?」


しゅんっ……とする時雨。


時雨に獣の耳があれば、垂れ下がっているところだ。


いつも気の強い時雨がしょぼくれているため、沖田は不覚にも可愛いと思っていた。


(……。この人、これわざとやってるのかな?って、そんなことより――)


「いや、そんな痛くなかったし、助けてもらってすごく助かったよ。ありがとう。」


「本当か!?よかったー!」


気にしていたのか、ドッと肩の力が抜けたのだった。


そんな時雨にぷっと笑ったのは言うまでもない。


「――そうそう。あの時思ったんだけど時雨って、女子と思えないくらい力強いよね?」


例え弱っていたとは言え、沖田は男である。

女の脚力で人間を蹴り飛ばすなんて、信じられなかったのである。