幕末怪異聞録



それから一ヶ月、時雨と狼牙はこの空き小民家に寝泊まりし、京の町で妖怪退治の仕事をしていた。



「ありがとうございました。」


「ああ。またおかしなことがあれば私を訪ねてくればいい。

それじゃあのぅ。」


襟巻きで顔を隠しながら時雨は嬉しそうな表情で町を歩いていた。


にやける顔を隠しているつもりだろうが、その顔は全く隠れていなかった。


「何かいいことでもあったのか?」


話しかけたのは外で待っていた人間姿の狼牙。


狼牙は昼間、町を歩くとき人間の姿をするのだ。


そんな狼牙に笑顔を向けた時雨。


「今さっきの家に丁度、寺田屋ってとこで働いてるおじさんがいてな?
私がボロ屋に住んでると言ったら、部屋を用意してやるから夕方来るといいって言ってくれたんだよ!」