幕末怪異聞録



寒空の下、時雨と狼牙は京の町を歩いていた。


「どうすんだよ!親父さんとこに今日泊まるんだと思ってたのに……。」


「馬鹿か。あんなとこで寝れるか!!」


父のボロ屋はお世辞にも綺麗とは言えず、埃が溜まって汚かったのだ。


「だからって、こんな真夜中にどこ行くんだよ!」


「……。」


途方に暮れて立ちすくんでいたら人が近寄ってくる気配がし、時雨は刀に手をかけた。


(全く…。この刀は人間斬れねえんだよな……。)


そんなことを思っていたら、向こうから声をかけてきた。


「どうしたがか?こんな夜遅うに……。」


(ん?京の人間じゃない…?)


「て、何話しかけちょるがか!」


「ん?そん人が困っちょうけ……。」


「おまんは馬鹿か!じゃけえって話しかける奴がおるか!」


見知らぬ男二人は何やらよくわからない言い争いをしだしたのだった。