「時雨さん、水持ってきたよ。」


湯呑みに水を入れて持ってきたのは藤堂だった。


「平助の割に気が利くじゃねえか。」


「当たり前だっての!
あんなにでかい声ではしゃいでたら時雨さん、目が覚めたんだって気付くし。」


土方と藤堂のやり取りを見ながら、時雨は湯呑みを受け取り、水を口にした。


「――はぁ…。
生き返った…。ありがとな、平助。」


ニコッと笑う時雨を見た藤堂は、顔を赤くして「お、おう!」とぎこちなく返事をした。


「――?

あ、そう言えば冬兄はどこ行った?」


気付けば自分の兄である冬鬼がいなかった。


「あぁ。あいつなら、『帰らねえと怒られる!』って帰った。
あいつ、嫁の尻に敷かれてんのか?」


土方の質問に時雨はコクリと頷いた。


「冬兄の嫁さん、すっげえ強いんだわ。」


時雨にここまで言わせるのだから、本当に強いんだろうと一同は思った。