幕末怪異聞録



困ったような笑みを浮かべ、梅を見た。


「すまんな……。」


やはり苦しいのか、深くうなだれ、肩で息をした。


「今西沢が来たら、あんたは間違いなく消される。
だから――」


首の数珠を取り、何かの呪文を唱えた。

そして首を上げた瞬間、懐の御札を梅に投げ貼り付けた。


『――!!
時雨!これなんやの!!』


梅の体は光り、見る見るうちに消えていっている。


「これは強制退界と言ってな、強制的にあっちの世界に送りつけるんだ。
だが、二度とこちらの世界には還って来れない―――つまり、輪廻の輪から逸脱してしまんだ。」


灰鐘は泣きそうな顔を浮かべ、目を伏せた。


「ごめんな…?
あまりこの技を使いたくなかった―――」


そんな灰鐘の頬に手をあてがった梅は、綺麗な笑みを浮かべていた。


『ありがとう時雨…。
無になることを覚悟してたあたしが向こうの世界でまだ存在できるんやろ?
うれしいわあ……。
最期に…最期に時雨に出会えたこと、本間によかった…。
ありがとう…。』



そして梅は完全に去ってしまった。