―――その日の夜。
彼女は彼の夢を見ました。
真っ暗な闇の中、遠くで彼が笑っていました。
彼女は驚きと嬉しさの余り駆け出します。
しかし…―――――
『なんで…?』
走っても…走っても…、
彼のもとにたどり着くことができないのです。
彼女は涙を滲ませながら手を伸ばしました。
もしかしたら、彼がこの手を取ってくれるかもしれない。
そんな期待を寄せて…―――
一瞬、この手を取られたら死後の世界に行ってしまうのではないかと思いました。
だけど、すぐにそれは消え去りました。
たとえどんな世界でも、彼がいれば彼女にとっていいのです。
さらに伸ばし、彼を求めました。

