*短編小説*花びらを胸に





季節は巡り、桃色の花が咲きました。





彼女は花びらを手に取り、あの忌々しい川に立っていました。





自分の大切な、愛する彼を奪ったこの川に、彼女は今願いをかけるのです。





子供たちの歌の通り、花びらを胸にあてて彼の名を言います。


そして…―――――






『私の想いは変わらない。ずっとあなたを想い続けるから…』




そう心に誓い、彼女はそっと川に流しました。





流れに従い、花びらはゆらゆらと川下へと流れていきます。





彼女は先ほどと同じ――花びらを胸にあてた時と同じ格好でその行く先を眺めていました。






どんなことでも構わない。






――――…私にはこの方法しか残されていないのなら、これをやるまでなの。





目を閉じて、花びらが向かう先を想像した。





――――彼が偶然にそれを拾う姿を……。