「坂原君、まず、幸の命を救ってくれてありがとう。君がいなかったら…幸は助からなかった。」



男性はそう言って深々と頭を下げる。



「そんな…。顔を上げて下さい、おじさん。」



坂原は、幸の父親である、漣 京太郎(サザナミ キョウタロウ)の肩に触れた。



「幸はあの日、先生から『完全失明』すると宣告されたんだ。」



「…そうですか……。それで………。」



その先はお互いに言わなかった。…言えなかったのかもしれない。



「幸は『心的外傷後、ストレス障害』らしい。死を経験した後や、心に傷を負った時になる障害だと言っていたよ。」




「それで忘れてしまったんですか…?」



坂原の言葉に、京太郎は頷いた。