バトンを握りしめて走る私には周りの声は聞こえなかった。

ただ、ひたすら前を向いて全力疾走するだけ。



もしかしたら、周りの人の目には常にこの私の姿が映ってるのかもしれない。


ジンを必死で追いかける私の姿…。



アツシにバトンを渡したところで、わあああっという歓声が耳にとびこんできた。

無で走っていた私は、そこで初めて気が付く。


アツシがトップを走っている事。



「美織!よくやったーっ!」



彩乃が応援席からブンブンと手を振りながら叫んでる。

反対側の列で待機してるジンを思わず振り返ってしまった私。


ジンは私と目があうと、笑顔で何度かうなずいてくれた。


必死で走った私は前を走っていた白組を抜いてトップでアツシにバトンを渡したらしい。



そして、そのまま抜かれる事はなく、アンカーは白いゴールテープを切った。