そしてジンはバトンを受けて走り出す。
さっきの100メートル走と同じように、真っ直ぐ前を見て真剣な目で白組を追った。
差はどんどん縮まっていく。
「じんやーっ!行けーっ!」
応援席から彩乃の怒鳴る声が聞こえるくらい、紅組は盛り上がっていた。
半周を通過した時、私はジンの姿を目で追いながらバトンゾーンへ立つ。
ジンが私に向かって走ってくる。
これがリレーじゃなかったら、真剣な目で私に向かって走ってくるなんて事はないだろう。
先にトップの白組がバトンを受けて走り出す。
けれど、そのすぐ後をジンからバトンを受けた私も走り出した。
「美織!行けーっ!」
全力で走る私にジンの声が響いてきた。
言われなくても、いつだって私は全速力で走ってる。
叶わない恋だってわかっても、いつだってジンに向かって走ってる。



