ジンはスタートの構えをした。
先にゴールしている仲間達から冷やかしの声が飛んできてる。
その声が耳に入ってるのか入ってないのか…
ジンはジッと前を見つめてスタートの合図を待っていた。
パンという乾いたピストルの音と同時にジンはスタートを切る。
本当に一瞬の出来事だった。
瞬きをする事を忘れるほどのジンの綺麗なフォームに私は思わず椅子から立ち上がる。
さっき貴昭が手を抜いた最終コーナーをまわっても、ジンのスピードが落ちる事はなかった。
彼は手を抜く事無く、そのまま風を切って、トップでゴールテープを切った。
「ちょ、何アレ!仁哉のくせに何1位なんかとっちゃってんのっ?!」
彩乃の声で我に返る私。
ジンの走る姿なんて見慣れてたはずなのに、見入ってしまった。
すごいドキドキしてる。
ただ、走ってる姿を見てただけなのに。



