カッコよく片手をあげたけど、奴が本気で走るわけないなと何となく悟った。
ピストルの音が鳴って、一斉にスタートしたけれど、途中までスピードにのってた貴昭。
でも、案の定、直線コースに入ったら手を抜いて流して走ってた。
「やっぱカッコいいね。見た?今の華麗なスタート」
「…最後まで走らなきゃダメじゃん…」
「そこがまたいいんだってば」
あきれた顔をしてる私だったけど、彩乃は完全に無視。
貴昭やジンと仲がいい人達はほとんど本気で走ってないから、目立って悪くは見えないけど。
「あ、次、仁哉だよ」
「え?」
彩乃に肩をつつかれて、私は慌ててスタートを見た。
紅のハチマキをしたジンがスタートラインにいる。
「仁哉も途中でやめちゃうよ。すでにゴールのほう見てニヤニヤしてるし」
「…まあ、そうかもしれないけど…」
別に1位をとる期待なんかはしてない。
ジンが走ってるところ、見た事あるし、改めて見るほどでもない。



