15歳のラビリンス



カッコよく片手をあげたけど、奴が本気で走るわけないなと何となく悟った。

ピストルの音が鳴って、一斉にスタートしたけれど、途中までスピードにのってた貴昭。


でも、案の定、直線コースに入ったら手を抜いて流して走ってた。



「やっぱカッコいいね。見た?今の華麗なスタート」

「…最後まで走らなきゃダメじゃん…」

「そこがまたいいんだってば」



あきれた顔をしてる私だったけど、彩乃は完全に無視。

貴昭やジンと仲がいい人達はほとんど本気で走ってないから、目立って悪くは見えないけど。



「あ、次、仁哉だよ」

「え?」



彩乃に肩をつつかれて、私は慌ててスタートを見た。

紅のハチマキをしたジンがスタートラインにいる。



「仁哉も途中でやめちゃうよ。すでにゴールのほう見てニヤニヤしてるし」

「…まあ、そうかもしれないけど…」



別に1位をとる期待なんかはしてない。



ジンが走ってるところ、見た事あるし、改めて見るほどでもない。