ビルに入ると、外とは違い静かだった。
入口には二人ほど人がいた。
銃を持っていた。
山本の報告では『R』の基地に大量の武器があったことと言っていた。


この計画は三カ月も前から計画されていたのだろう。
僕は『透明』になったまま、左手を『強化』した。
僕は人を殺したくなかった。
それは僕だけではなく、伊藤もナナミも、誰だってそうだ。
僕の力が世界を滅ぼすのは人を殺してしまったときだろう。


だから僕は人を殺さない………
僕はタイミングを見計らって一人ずつ気絶させた。
『選択』能力で『検索』をして伊藤の場所がわかった。
階段を使い、伊藤のいる階まで昇った。
簡単なことだった。
全ては順調だった。


―――目的地に着いた。
周囲の様子を見たが誰もいない。
僕は廊下を歩いた。
『検索』では一番奥の部屋から感じたからだ。
僕は部屋を開けた………
奥にもう一つ扉があった。
僕はそこに向かった。


そのとき………

バンッ………


僕は何かに叩きつけられた。
僕は地面に倒れた。
何が起きたのか全く分からない。
『透明』のはずなのになんでわかったんだ。
僕は意識がハッキリしない状態で殴られた報告を見た。
そこには、知っている顔があった。


僕達『C』の目標と同じで………
組織名は『R』………
今回の事件を起こした張本人………
椿十郎


僕は朦朧とする意識の中、椿十郎を見た。
彼はこっちを見ている。
おかしい。
なんで見えているんだ。
僕は自分の手を見た。
僕の『透明』は消えていた。


理解できない状況の中、僕は一つだけわかることがあった。
殺される………
伊藤、ナナミ………
ごめん………


「やあ、元気だったかい………
神山君」


僕は一瞬頭が真っ白になった。
なぜ椿十郎が僕の名前を知っているんだ。


「私だ。森下だ」