―――僕達はナナミを助け出した。
山本と辻本に連絡をして僕の家に集まった。
伊藤に起きた出来事を話した。
伊藤が言うには、ナナミを捜している最中に『W』の者が伊藤に声を掛けたそうだ。
ナナミを人質にしたので無抵抗でビルまで付いて行った。


ビルに着くと、男は去り、別の奴が現れた。
そいつが『W』の総長だ。
そして、僕が現れ、現在に至った。
ナナミにも出来事を聞いたが話したくないのか、記憶が飛んだのかはわからない。


話を聞けなかった。
ただ、「ありがとう」の一言だった。
一応、伊藤が家出ということで辻本が預かっていたことにした。
親、学校、その他色々に迷惑を掛けないように、若さを利用させてもらった。




僕が能力に目覚めたことを伊藤が皆に報告した。
皆から祝福を受けるが別にどうでもよかった。
伊藤が知っているのは僕の能力が『具現化系』ということだった。
僕は本当の能力『選択』と『超越者』のことは話さなかった。
面倒なことになると思ったからだ。




問題は『C』の今後である。
僕達は現在、高校二年生であり、来年には職を探さなくてはならない。
進学したいのなら別だ。
僕の学校は進学校ではない。
たいていの人が職に就く。


それにそろそろ現実を見るべきだろう。
所詮、高校生五人が頑張ったところで世界は何も変わりはしないことを………
ナナミのことにしても、『W』のことにしても僕達の考えの甘さが原因なのだ。

僕は皆に言った。


「伊藤、それに皆………
もう辞めないか」


皆が僕を見る。
僕も言った以上、言葉を曲げる気はない。