本当に、
もうこれで終わりなんだ。
矢沢先輩。
大好きな矢沢先輩。


音を立てないように
椅子から立ち上がる。

目を隠したままの、
矢沢先輩にキスをする。
彼の体が少し硬直する。

煙草の味がした。

髪の質感も、
広い胸も、
声も、
指先も爪の形も、
本当に大好き。

矢沢先輩。

大好き。


ポケットから取り出した
赤い小さな裏ボタンを
棚にそっと置いて、
私は病室をあとにした。