デザイン棟の前で、
春樹が写真を撮りながら待っていた。

「優、遅いよ」

「ごめん、絵筆を洗ってた」

最近日が長くなってきて、
夕方なのに昼みたいに明るい。

私の右に優にいちゃんが、
左に春樹がいて、
三人で並んで歩く。
他の生徒から、
私はどう見えているのだろう。

「私、遊んでいるように見える?」

駅まで歩きながら、
春樹に聞いてみる。
ちょっと眉をひそめたあと、
馬鹿にしたような笑みを浮かべて

「遊んでるの?」

と、逆に聞かれた。

矢沢先輩とは、
時々お茶を飲みに行ったりするけれど、
まだ一回しかキスしたことは無いし。
「遊んでる」ってどういう状況だろう。

首をかしげて考えていたら、

「天草が何か言ったんだろ」

優にいちゃんがあきれたように口を開いた。

「天草……先輩?
は、どうして私のことを知ってるの?」

優にいちゃんは空を見上げて
少し考えた後、

「ごめん、千里ちゃん!」

と、突然手を合わせて謝った。