「女と別れてきた」

と、矢沢先輩が苦笑いしながら言う。

驚いて言葉が出なくなる。
しばらくたって、やっとのことで、

「付き合っている人がいたんですか」

とだけ言えた。

「まあ、遊びだったし。相手の女も
『またフリーになったら声かけてね~』
なんて、軽いもんだったし」

頭がくらくらした。
恋人がいたのに、
どうして私に告白なんてできるんだろう。

「でもさ、ちゃんと別れてきたんだぜ。
二股かけててもバレないのに。
千里のこと、本気だから
きちんと清算してきたんだ」

テーブルの上に置かれた
私の右手を両手で握って、
矢沢先輩が言う。

「これからは千里だけだから」

うつむいた私の顔を覗き込む
矢沢先輩の笑顔はかっこ良すぎて。

やっぱり、
すごく遊んでる人なんだろうな、
と思って不安になった。