いつもより早い時間に
部室を出てしまったので、
帰りに駅前のコンビニで買い物をした。

いつも読んでいる少女マンガ雑誌と、
薬用リップ。

“ほんのり色づく、チェリーの香り”
と、パッケージに書かれている。

どうしてそんなものを
手に取ってしまったのか、
自分でも良く分からなかったけど、
買ってみてから改めて、

さっきの私、
唇カサカサじゃなかったかな。

と、心配になってきた。

そんなことより、
あんな風に逃げ帰ってしまって、
矢沢先輩は怒っているだろうか。

キスした後の先輩の表情は
なんだかすごく大人で、
あたりまえだけど
男の人で。

「ファーストキスだったのかあ」

まるで、
自分の身に起こった出来事では
無いみたいな気分だった。