―――56年前
俺は『W』の傭兵として井上研究所の警固を行っていた。

この施設に移動したのは半年前だ。

それまでは世界各地でテロ活動を行った。

始めは『W』が何を目的に行動しているのかがわからなかった。

俺が『G』に所属しているとき『W』の情報をある程度入手していた。

それは『W』三代目総長が就任してから『穏健派』と『過激派』に分かれ、世界の国際テロ組織となったこと。

また、所属している者達は傭兵であること。

活動に規則性がないことだ。

しかし、『W』に所属することで『過激派』の行動目的が明白になってきた。

『過激派』の行動は『G』議長隠密部隊と同じだということだ。

『G』が世界に邪魔な存在を消すように、『過激派』も『W』にとって邪魔な存在を消そうとしていた。

しかし、敵を見極めることが出来ないため、『G』らしき者や組織の破壊を行っていた。

『G』から見れば、規則性がないように見える。

だが、今まで五十嵐と13年を共にしてきた俺だからこそ、彼らの行動する意図を理解出来る。

俺は部隊に所属して結果を残し続けた。

これは仲間を犠牲にして手に入れたものだ。

俺は出世するためには何でもやった。

仕事をこなし、俺の邪魔をする仲間を裏切った。

その結果、7年後に井上研究所の警固の任務に就いたが………




俺は左遷されたのだろうか………

この半年間、一日中、研究所の門の警備をしていた。

この研究所は『ヘブン』国内の山奥にある。

この山には研究所以外は何もない。

なぜ、ここに研究所があるのかがわからない。

調査をしようにも、仲間同士で監視を行っている。

聞けば、この警備を行っている者達は世界各地で成果を上げた者達だ。

つまり、『過激派』の中では仕事のできる者達だろう。

では、なぜ………

そんなことを考える時間などいくらでもある。

それぐらい暇だった。