俺はもういじめられっ子の泣き虫じゃない。

背も伸びた、声も低くなった。だけど全ての事から守れる強さはない。


『ごめん、何も出来なくて』


明日にはもう宇佐美はいない。

この町にも学校にもいない。


いつもいつも宇佐美の背中ばっかり見ていた。
小学校、中学校、高校とその小さな背中を追いかけていた。

でも今なら、

後ろを追いかけるんじゃなくて肩ぐらい並べられるんじゃないかって思う。



『タツ………本当はね、すごく怖いよ。知らない場所で上手くやっていけるのか、学校で友達ができるのか、お父さんがちゃんと元気になってくれるのか本当は不安で仕方がない』


宇佐美は俺の体をギュッとして、その声は震えていた。



『私ね、辛い時いつもタツの事思い出してた』


『……』


『タツといつも一緒にいたあの時間はすごく楽しくて、悩みも不安も何もなくて。あの頃に戻れたらいいのにっていつも思ってたんだ』


『……』


『なんで昔はあんなに堂々と何でも言えて私は強かったんだろうね。悩みも不安もすぐに忘れられたらいいのに』