教室は真っ暗で乱れた机や椅子は下校当時のまま。電気を付ける訳にもいかないし俺は慎重に前へ進んでいった。そして------------



『こんな所で何してんだよ』


隅っこで体育座りをしている宇佐美を見つけた。


『……………タツ…』


宇佐美はさほど驚かなかった。むしろこんな所で1人で居られるぐらいだから俺よりは肝が座ってる。

そういえば幽霊とかおばけとか昔から平気な奴だったっけ。


『どうやって中に入ったんだよ?』

『西口の扉から。ほら、タツもよく早退とかで抜け出す時に使ってたの見た事あったから』


…………見てたのかよ。

すれ違ってもなにしても他人みたいな顔してたくせに。




『………転校するんだろ?』


俺は宇佐美と少し離れた位置に座って問いかけた。


『うん、明日の朝には出発する』


“明日“というのが全然リアルじゃなくて、まだ嘘なんじゃないかって思ってる。


『なんで急に?』


『お父さんがね、お母さんが生まれ育った町に引っ越そうって。正直ずっとお父さんの体調が良くなかったんだ。お母さんが居なくなって精神的にもきつそうだった』


『………』


『だからこれをきっかけに向こうで新しい仕事見つけて自然がたくさんある所で暮らしたいって。
そしたら少しはお父さん元気になるかもしれないし』