唇にキスを、首筋に口づけを



そして映画館を出て少し歩いたら見慣れた駅周辺が見えてくる。



夜遅いからか、


人通りが多いはずの駅も昼間と比べると大分人がいないものだ。



「今日は何で来た?」



ジュンくんはそう私に問った。



映画館を出てから結構喋っていなかった。



私は恥ずかしくて口が開けなかったのだけど、


ジュンくんはどうなんだろうか。



なんだか変な感じ。



心が宙を浮いているような・・・。



うう、なんかソワソワしてるみたい。




って、返事しなきゃ。



「今日はバスだよ。」



私はニッと笑えたかどうかわからないけど笑って見た。





「そっか。


僕も今日は自転車なんだ。


だから送れないんだけど・・・」



ジュンくんは申し訳なさそうに言った。



「いや、平気だよ!」



私は手を大きく振ってジェスチャーした。


「ほんとかあ?」



ジュンくんはわざとらしく私の顔を覗き込むような仕草をする。



「ほんとだよ・・・!



あれは本当にたまたま運が悪くて。」



うん、と私はあの日の出来事を思い起こした。



「そうだな。


運が、悪かったということにしとこうかな。」



運が悪かった、を強調している。



いや、めちゃめちゃ綺麗に笑ってるけど、

なんか言ってること嫌味っぽくない?




「うん、そうなの、そうなんです。」





私は何も弁解せずにそのままのっておいた。



「ああ、


それじゃ、そろそろバイバイしようか。」




そう言ってジュンくんは手を振った。





「そだね。


バイバイ」





私もあっさりと手を振る。



そしてバスロータリーに向かって歩き出した。





そして歩くこと15秒くらいだろうか。




ガシ、





急に肘あたりに何か掴まれるような感覚。



「わっ・・・!」



え!?



な、何!?

私はすぐに後方に振り向いた。




「待って。」



その瞬間にさっきまで聞いていた声。



そして目に入る端正な顔立ち。




「あ、びっくりした。




ジュンくんか。」




私はほう、と安堵の息をもらした。



「うん、僕だよ、」



ジュンくんは笑う。



けど、何かが違う。



何か、笑顔の中に真剣な顔が混じってるような。



これは気のせいかな・・・?




まあ、いいや。



「どうしたの?」



私は普通に問いかけた。



すると、



「言い忘れたこと、あって。」



ジュンくんは私の瞳をしっかり捉えながら言った。



あ、なんか、呑まれそうになるってこのことかな。



私はそんなことを頭に過ぎらせていた。