唇にキスを、首筋に口づけを




ある日の朝、目が覚めると、



いつもの目玉焼きの匂いがしなかった。





いつも、ジュー、って音が聞こえて目が覚めてたりしたのに。




隣のベッドにはまだ爽哉が眠ってたっけ。




大概、私は爽哉の家に預けられていた。




・・・おかしいな、



おばさんがご飯作ってないなんて。




私はそんな疑問を抱きながらも顔を洗ったよ、確か。




そして下に降りた。




「・・・おはよー」




そう、声に出しても返事はなかったな。




時刻は7時半。




・・・どうして、誰もいないの・・・?




って思ったような気がする。




私は自分の家に戻ってみたりしたっけ。




家はガラン、て何の音もしなかったな。




靴も、なかったし。




急いで爽哉の家に戻って爽哉をたたき起こしたっけ。





爽哉、こんな時だって全然起きてくれなくてさ。




私、すごい怖かったのに。





「・・・電話してみればいいじゃん」




寝ぼけながら爽哉が言ったっけ、



私はそれを聞いて、



「圏外に決まってるじゃん!」



って怒鳴った気がする。




基本、ヴァンパイアが現れるのは薄暗い森とか山とか・・・、




だから4人もその辺りに行ってて、

そんな場所で電話なんて通じるわけないじゃん。





爽哉はそのまま黙っちゃってさ。




途方に暮れてたら、いきなり爽哉が、



行くぞ、って。




キリッてした顔で言うから、私はそのままついて行った。




きっと、私が今にも泣きそうな顔してたから・・・、



爽哉は頑張って雰囲気を作ってたんじゃないかなって思う。




慣れない山道歩いて、



こんな広いところで見つけられんのか、って思って歩いてた。




警察に通報した方がいいんじゃないかってそんな時に思ったりして。




見つかるのかなぁ、



そうぼやこうとした瞬間だった。




これはしっかり記憶してる。




昨日の出来事みたいに、鮮やかに。




先を歩いてた爽哉が急に立ち止まってさ。