唇にキスを、首筋に口づけを



それから彼は注文した料理を食べ終えると、爽やかに店を後にして行った。



「先輩、知り合いだったんですか?」



店を閉めて、掃除をしている最中、

最近入ってきた、バイトの子に言われた



「んー、

知り合い・・・、かな?」


私は掃き掃除を続けながら、

俯きつつ話した。



「かっこいい人でしたから、


彼氏さんかな、って。」



フワリと笑った彼女。


「違う違う、


そんなこと言ったら向こうに失礼だよ。」



私はそう言って、また掃除に専念する。



あり得ないでしょ、


あんなに整った感じの人が私の彼氏とか。


・・・にしても、また会えるなんて。



何かの縁なのか、


ただの偶然なのか。



この前助けてもらったときも、ここの駅周辺だったし、


今日もこの店に来たから、きっとこの辺りに住んでいるんだろうな。



そう思いつつ、仕事を全て終わらせて、

帰り支度をした。



ケータイで、何処か異常がないか調べてしまうのは、

まあ、長年の癖だ。



よし、今は異常なし。



私はそう確認して、
バイト先を後にした。




今は世に言う夏休みとやらで。



ハメをはずし、夜遅くまで遊んでいる、学生が見えた。



夜だというのにあまり涼しくない。




私はフラフラと、特に考えもなしに歩いていた。



その時、



「あの・・・」


何処かで聞いた事のある声がした。



ん?



私は咄嗟に足を止めた。



私への呼びかけで、いいんだよね?



数メートル先にいる、
人影に目線を向けた。



私は人影に向かって足を進めた。




近づくに連れて、
人影の表情が明らかになってくる。



「あ!」



私は人影の正体が分かった瞬間に声が出た。



「さっきの!」



私はさっきの店内同様、大きな声が出てしまった。




またもや私は両手で自分の口を押さえた。



すると彼に優しく微笑まれた。



うわあ、なんて美形なの・・・!



尊敬してしまう程だ。