唇にキスを、首筋に口づけを



それから、やっぱり怒られた。



お前はぼんやりしすぎなんだよ、


とか、


お前は周りが見えなさすぎ、


とか、



グサ、グサ、グサって図星なことを言われて。




私の心はズッタボロ。




基本、何年も一緒にいるから、次の日は普通に喋れたけどね。




それに、あの助けてくれた人の顔も、頭に浮かばなくなっていた。




「今日のバイトは何時からだ?」



爽哉がお昼を食べながら私に聞いた。




「えーと、


6時から10時」




「夜遅いから気をつけろよ。」




「うん、気をつける。」




爽哉は今日も夜遅くまで狩りだ。




そっちの方が気をつけて、って感じだ。




午後からは少しトレーニングをして、


爽哉の夜ご飯の分を作り置きしておいた。




時間になって私は出かけようとする。




「バイト行ってきまーす」



私は地下室にこもってトレーニングをする爽哉に声をかけた。




「あいよー、

いってらー」




爽哉は搾り出すような声でわざわざ返してくれた。




きつい練習しているんだ、
と伝わる。




爽哉は自分に厳しいからなぁ・・・。




私はそうふと思い、家を出た。




バイト先につき、


制服に着替える。




いつものように接客していく。




時計に視線を向けると、

もう9時になろうとしていた。



そろそろラストオーダーだ。




客足も途絶えてきている。




むしろ、今店にいるのは店員だけかもしれない・・・。




じゃあ掃除の準備でも、


と私は踵をかえした瞬間だった。




―――カランコロン、



そんな可愛らしい音色。




店のドアが開かれた時のみ聞こえる音。




私は条件反射で振り向き、挨拶をする。



「いらっしゃいませ。」




長年の経験から叩き込まれた笑顔をつくった。