唇にキスを、首筋に口づけを




その時だ、



「危ねぇよ・・・!」



グイ、



二の腕あたりを捕まれる感触。




そして後ろにいく重力。



・・・引っ張られた。




「わっ・・・」




私は少しバランスを崩して後ろに後退する。




そうした瞬間に目の前に車が通った。




・・・あ。




鳥肌が立った。



危機一発。




私は引っ張られた方向に顔を向けた。



そこにはやはり爽哉。




不機嫌そうな表情が丸出しだ。




「・・・何車が通るとこで立ち止まってんだよ」



・・・う、



私は唇を噛んだ。




小さくごめんなさい、と謝る。



すると

「気をつけろよな」




爽哉はそう睨んだ目を向けて前へ歩きだした。




私は爽哉の背中を見るばかり。



あー、ヤバイ。


今のは本当に事故が起こりそうだったよ。




はぁ、私は胸を撫で下ろす。




そしてそのまま硬直してしまう。



・・・あれ、何か私忘れてる気が・・・。




・・・?




私は何となく振り向いた。




そして、私が立ち止まった理由に思考が迫る。




「・・・!」



そうだ、私を助けてくれた人が・・・!




どこにいってしまっただろう・・・。



私は視線をあちらこちらに巡らす。




ハンカチ、返したい。




そしてお礼も言いたいのに・・・。



あの人の笑顔が脳裏を過ぎって過ぎって過ぎる。




・・・いないか。




いくら探してもいない。




私はため息をついた。



そして、



「ゆりな!」



遠くから声が聞こえた。




ビク、



私は反射的に肩が震えた。



私は声が聞こえた方に咄嗟に振り向く。




私が見えた先・・・、



そこには爽哉。




・・・ああ、あの感じ、絶対怒られるよ私・・・。




腰に手をあてて、片方の腕はダランとさせる、



あれは爽哉が怒ってるポーズだ。



本人は意識していないだろうけど。




そして私はちょっとした覚悟を決めて、

爽哉が立つ方に歩きだした。




脳裏にはやはり、私を助けてくれた人の顔が過ぎっていたのだけれど。