唇にキスを、首筋に口づけを





ご飯を食べ終えて、家事を一通りすませた。




私はこんこんに電話をかける。




3コールくらいで明るい声が聞こえてきた。




「もしもーし、ゆりな?」




「うん、ゆりなです」




私は淡々と返した。




私は少し、ほんの少しだけ怒っているんだ。




勝手に爽哉に連絡して。




爽哉の様子に無駄にドキドキしちゃったんだから。




「どしたー?」




「あのね、


昨日は早く帰っちゃってごめん。


だけどあの人は彼氏じゃないからね。」




私は自分が謝るべきことは謝った。




「え?彼氏じゃないの?」




声が大きくなって、思わず耳をケータイから遠ざけた。





「うん、フリ」




「どんだけあの空間が嫌だったんだよー」




あははー、とケラケラ笑う声。




「あの合コン台なしにしてたらごめんね・・・」




「ううん、いーよいーよ。


大していい人いたわけじゃないし」




こういう寛大なところが好きだ。




「聞いてよ、


あの中にいた男の一人に私キスされそうになったの」




私は爽哉に聞こえないようにコソコソ言う。




「えっ、マジで?


あ、アイツか?宮武とかいう・・・茶髪の」




「そう、ソイツ!


そのときに助けてくれた人が彼氏のフリしてくれた人なの。」




「えー、そうなの」




「うん、あの茶髪には気をつけた方がいいよ。」




「わかった、連絡先削除するように皆にも言っとく。」




何だかんだで真剣なトーンだった。




「でもさ、爽哉に言わないでよ」




「え、あ、うっちー?」




「うん、爽哉の様子が変でびっくりしちゃったんだから。」




「ごめんねー。


喧嘩しちゃった?」




「いや、なんか合コンに言ったことに軽く怒られた。


明日買い物ついていったらパーにしてくれるって言ってたけど・・・」




「なにそれ、デート?」




「違う違う」




「うっちーも攻めるねぇ!」



なんだか声が明るくなった。



「何が?」




「なんでもないよーい、


じゃ、授業始まるから切るねー」




「あ、うんわかった。


ばいばーい」



私はそう言って電話をきった。