唇にキスを、首筋に口づけを




スザ、と俺の靴とカーペットが激しく擦れる音。



そして対峙する何か。



男だ。


髪は白髪混じり。



きっちりとしたタキシード。




その背中を追うように男の正面が俺を向く。




ごくん、俺は生唾を飲み込む。



そして口を開く男。



どうもここまでの瞬間がスローモーションに見えた。




「はっ、見事見事。


今までの中で最も反射神経はよいね」



すると男はニコリ、と目をなくして笑った。



屈託を感じた。




しかし・・・



「国王様、お初にお目にかかります。」



俺はすぐに胸に手を当てて跪く。



振り向いてからすぐに気づいた。




この顔は・・・この威厳は・・・この圧迫感は・・・



国王であると。




「ジュン・ラウド・ウィットと申します。

本日はお招き頂き、誠にありがとうございます。」




俺はさらに深々と頭をさげる。



「いやはや、顔をあげなさい。」



頭上から声がした。


そしてまた別の気配、またか。



「国王様、お言葉ですが、

その爪を離していただきますと幸いです。」



俺の頭上、すぐに爪を感じた。



ヴァンパイアの、獣としての鋭い爪。



「おお、君は勘が鋭いね〜」



ははは、と大きな声で高らかに笑あげると、


これで娘のことはしっかりと守れそうだな、と続けていた。



・・・端から契りを結ぶ気はないっつーの。



俺は心の中で悪態を吐く。




「娘は気難しいやつでな、


どうか変な態度を取っても、流してくれて構わない。



すぐ隣の隣の部屋にいるぞ。


早速会ってきたまえ。」



すると国王は俺の手を取って顔をあげさせた。




さぁ、行け。



そんな風に手で合図されて俺は進んだ。




そして頭を下げて国王の部屋を出て、

隣の隣の部屋の扉の前にやってきた。