あ、あ・・・。
「ッ、」
男は無言でズカズカと歩いて行った。
は、は、あ・・・
「・・・」
ああ、ああ・・・。
私は足が崩れた。
あ、も、あ、ヤバい・・・。
足がフニャフニャだ・・・。
力入んない・・・。
「ッー・・・」
頬に雫が滑っていく。
・・・ッ、とまんないんだけど・・・。
・・・こんなことで泣いて・・・、
私、弱虫だ・・・。
こんなことよりも辛いことがいくつもあったはずなのに・・・。
恥ずかしい・・・。
私は手の甲で流れる水滴を拭う。
「・・・大丈夫ですか?」
声がした。
ビク、
私は反射的に顔を上げてしまった。
涙でぐちゃぐちゃな顔。
涙で歪んで見えるけど、確かにさっきの声の主。
私を助けてくれた人。
「・・・どうぞ」
柔らかに口角を上げた彼。
目の前に差し出されるハンカチ。
鮮やかな青色。
「・・・あ、あ・・・
ありが・・・」
「無理に喋らなくていいですよ。」
また笑いかけてくれた。
私は彼の好意に甘え、ハンカチで涙を掬う。
「・・・助けてくれて、
ありがとうございます」
ようやくとまった涙と嗚咽。
私が泣き止むまで、ずっといてくれた。
「・・・いえいえ。」
ニコっと笑った。
・・・端正な顔してるなぁ。
艶やかな黒髪の短髪。
女子が羨むくらいきめ細かい肌。
スッと通った鼻筋。
紫色の瞳・・・。
ハーフだろうか。
「ご迷惑かけて申し訳ありませんでした」
私は大きく頭を下げ、
私は立ち去って自分の席に戻った。

