「顔を上げろ。」
ドスのきいた、
とても力強い声だった。
ぞわ、俺の全身の肌が栗立つ。
そして会長はキョロキョロと辺りを見回しながら、バイクから降りる。
謎の胸の動機。
・・・いや、緊張だ。
緊張し過ぎて苦しいくらいなんだ。
この人を目にすると、
皆が真っ直ぐにたって、この人を見つめる。
そして次の瞬間。
バチ、
そんな音がしたかのように、
俺と会長の視線が絡まった。
俺は怯みそうになった。
けど踏みとどまって会長をじっと見る。
一歩一歩、
俺に近づく。
さっきまで遠くにいたのに。
すぐに俺の目の前までやって来てしまった。
そして皺の深い顔に、さらに皺を刻んで、
俺に微笑みかけた。
・・・。
少し緊張が和らいだ感じがした。
一瞬でこの空間の張り詰めた糸のようなものが緩んでいくような感覚だ。
「君が内田爽哉か・・・。
天才と名高い。」
ふっと、また笑顔をみせる。
「大変恐縮です。
内田爽哉と申します。」
俺は深々と頭を下げた。
「君のパートナーが攫われた、と聞いたが。」
「はい・・・。」
俺は頭をあげて頷く。
そうすると、
そうか・・・。なんて顎をさする仕草を見せる。
そして、よし、
なんて頷く声も聞こえた。
何を言うのだろう。
緊張の糸がまたピッと引っ張られる。

