唇にキスを、首筋に口づけを




「・・・これからどこへ行くのですか?」

私は小さく質問する。


馬車から降りて、またフードを被ったヤツは、どうも表情が伺えなくて怖い。



いつ、口を開くのかも、わからない。



「行きつけの服屋に行くつもりだ。」



そう言ったときの声色は、少し明るかった。



気分はいいのかな、そう推察する。




・・・服か・・・。



ヴァンパイアでもオシャレをするような気持ちというものはあるものよね・・・。



それに付き合っていればいいのよね。


けど、できれば、



・・・隙を見て、
逃げて、

野原にでも、行きたい。




できれば、結界境線を見つけたい。



そう思った時だ。



「・・・ひっ・・・!!!」




ヤツの手の上にのせていた指先が溶け始めたのだ。



・・・しまった・・・!




逃げたいとか思ったら、いけないのよ・・・!




そう思って我に返ると指先は元どおりになった。





・・・そしてほっと胸を撫で下ろす。





「・・・お前。」





私がドキマギとしているとそんな風に呼ぶ声。



ヤツの声。



私はバッとそちらを反射的に見た。



・・・え、



私は少し固まった。




・・・一瞬、

ほんの、ほんの一瞬、



ヤツの顔が・・・



眉をよせて、眉毛たれさげて、


瞳もなんだか、細めて。




・・・曇った、というか、



悲しげな、顔。




それは、本当に一瞬だったけれど。




「今だに逃げてぇとか考えてんのか。」




はぁ、っとため息まじりに言われた。




怖い怖い。


「・・・すみま・・・」




私が俯きながらそう言おうとしたとき。




まだ躾がたりないみたいだな・・・。




そう、耳元で言われて。




私は戦慄するしかなかった。