唇にキスを、首筋に口づけを




ドクン、ドクン、




私の心臓が暴れはじめた。




15歳の記憶が蘇りそうになって・・・、




押し込んだ。





思い出すな、思い出しちゃダメだよ。




早く、消さなきゃいけないんだから、


こんな記憶。





・・・そんなことを心に念じても、


私の心臓はおさまらなかった。





こ、怖いよ・・・。





ヤバい、手が、無意識に・・・震えてきた。





私は自分の手を押さえ付けた。




あの事件から、本当に死ということが怖くなった。





今までは、フワフワした気持ちで死という言葉を使ったりしていたけど、


それができなくなった。





・・・それに、彼がいなくなったら私は一人だ。




嫌だ、それだけは。





震えるな、私・・・!




目をギュッとつぶったら、



思い出してしまいそうだった。




私は苦し紛れにテレビをつけた。




わーわーと楽しそうなバラエティー番組。




けど、頭の奥には伝わらなくて。




頭ではずっと、爽哉が浮かぶ。





・・・30分くらいした時だと思う。





いや、体感的には3時間くらいにも感じられた。





そんな時、




「ただいまー」





待ち望んでた人が、帰ってきた。




「・・・!」




私は声が出なかった。




か、帰ってきた・・・。




私は立ち上がったのに、へなへなとその場に崩れ落ちてしまった。





あ、あ・・・。




本当によかった・・・。





私は落ち着いてからすぐに玄関に向かった。




「おかえりなさい・・・!」




爽哉は丁度、玄関先に荷物をおいているところだった。





私は涙腺がゆるむのを絶えながら、


タオルを渡した。