ヤツが口を開くのがわかった。
喋り出すな、そう予想して身構える私。
体の筋肉が固まる感じがした。
「・・・お前、
誘ってるだろ・・・」
今にも消え入りそうな声で私の耳を犯す。
・・・っ、
声が、良い声過ぎて。
私の耳が耐えられない。
・・・は?
さそ、・・・はい?
さそってる、ですって・・・?
「俺、限界きてんだけど・・・。
お前の香り、
何でそんなにいい匂いなんだ・・・?」
・・・ヤツが眉を八の字にするのがわかる。
なんでそんな困ったみたいな顔するの。
・・・コイツにも、葛藤があるのか。
何かを堪えている顔だ。
やはりヴァンパイアという生き物は人間同等、いや、それ以上に頭がいい。
理性というものもコイツらには効くのか。
「お前ちょっと自覚した方がいい・・・。
この匂い、
お前の匂いはヴァンパイアを引き寄せる・・・。
俺の兄貴もそうだ、
それに、前に森にいたときも、たくさんの俺の仲間を引き寄せてた・・・。」
ああ・・・。
・・・そう、か。
私はフワフワした何かが落ち着いたような感じがした。
・・・そうなんだ。
やっぱりそうなんだね。
私は、この獣どもを引き寄せる何かがあるんだ・・・。
なんだか、
ヤツの言葉で私の中でなにかを腹を括った。
「今すぐお前を・・・」
何かを言いかけ、ヤツはとまる。
そのとき、つつっと私の首元が撫でられる。
びく、私の肩がはねる。
それと同時にヤツもビクッとする。
コイツは、何かとたたかっているそんなことが客観的に見えてくる。
何故だが、私の心も落ち着いてきた。
「これ・・・消えそうだな・・・」
ヤツは私のある一点をトントンと叩く。
何よ、何をするつもり・・・?
そこは、消えそうになってるあの、お前が前に付けた・・・。
冷静になっていた心に段々と火が付く。
焦りという火が。
また一気に心拍数が上がる。

