どくん、どくん、
なんで私はこんなにも緊張しているんだ。
・・・緊張してもおかしくはないか。
だって見知らぬ土地にいるんだから。
ヤツが口を開くまでがとても長く感じる。
あ、喋り出す。
口の開き方で最初の母音の音まで分かる。
そんなところまで私は神経を尖らせていたみたいだ。
「魔界」
ヤツはそう言ってニヤリと口角を上げた。
・・・あ。
なんだ、この感覚は。
上手く表現できない。
しいて言うならば、
高さ3mくらいの崖から落とされたみたいな感じだろうか。
なんとなく、予想はしていたし、
その分、それほどまでに絶望感を感じないと言うか。
それでも少しはショックなわけで。
私は目を泳がすしかなかった。
「お前を魔界に連れてくるのは簡単だったよ。
ゆりな自身が境目だからな、
境目を通るのにそれほどまでに労力はかからなかった」
・・・そんなこと誰も聞いてないわ。
ぽつり、心の中で呟いた。
「んま、助けが来るのを願ってれば?
多分、意味なんて皆無だろうけどな。」
そう、捨てるように言い放ったヤツは扉を開けて出て行った。
・・・バタン、
孤独な部屋に、そんな虚しい音が響き渡った。

