「さ……相模さん!
 大丈夫ですか!?
 これだから、きっと。
 あなたは、お酒なんて、飲んじゃいけなかったんじゃないですか……!?」

「うるさいな!
 大声を出したら頭に響くだろ………げほ、がほっ!」




 僕は、自分に割り当てられた部屋にこもって、酒を飲み出した。

 そして。

 そんなに経たないうちに。

 ピンクのフリルで飾ったトイレの便座に手をついて。

 胃の中のアルコールを全部出さないと、収まらない、おう吐と戦うハメに陥ってた。


 ……これは。

 この感じは。


 嫌酒剤(けんしゅざい)を飲んで、その後、酒を飲んだ感じと、似ている……!

 嫌酒剤って言うのは。

 アルコールに対して依存や、中毒を起こすひとに、これ以上、酒を飲ませ無いようにする薬で。

 少しアルコールを飲んだだけでも、苦しくなるんだ。

 それはまるで、急に、酒に弱くなったみたいに。

『酔っ払う』って言う状態をすっ飛ばして、いきなり。

 二日酔いが押し寄せてくるヤツだ。

 効果時間は、大体、丸一日。

 僕が自分で飲んだ覚えが無いから。

 ハニーが、どこかでこっそり、僕の食事に混ぜたかもしれなかった。

 以前は、何回か使ったものの。

 最近は、禁酒も上手く行き、もう飲まなくなって少しは経つのに。

 久しぶりの感覚に、胃がよじれそうになった。

 咳が収まらず。

 涙目で。

 トイレから一歩も出られないのを。

 どうやら、見かねて、助けに来たらしい。

 佐藤は、僕の背中を軽く叩いたり、さすったりしてくれた。

 服を着た上の背中とは言え。

 ハニー以外の男に触られるなんて、鬱陶しい、と思ったものの。

 純粋に、僕を助けようとしている。

 思いがけない佐藤の手の暖かさを。

 本格的に振り払うなんて、出来ない。