あのとき。



わたしは高校生だった。



わたしは、いつもピアノを弾いていた。



わたしには才能があるから。



天才だから。



親に、周囲にそう言われて、ピアノを弾き続けた。



憂鬱と。



ただ、弾くだけ。



最初は好きだった音楽も、いつしか嫌いになった。



何も楽しいことなんてない。



人生、つまらないことだらけだ。



そう思っていた。



そんなときに出逢ったのが、彼だった。



輝明。



それが彼の名前。



彼は高校の教師だった。



―――彼と過ごす日々。



それは幸せだった。