「菜月?」



足音に気付いたのか、彰吾は振り返ってベンチの背に腕を置き微笑んでくれた。


記憶が蘇る。


私は確か……



「……寒くない?」


「ん?あぁ、大丈夫」


「12月なのに、そんなに寒くないよね」


「もうすぐクリスマスだってのにな」


「ホントだね」



ベンチの前に回り込んだ私を追ってくれる視線。



あの時と同じ。



一言一句。



全く同じ会話。



腕を背もたれに置いたまま少しだけ体をずらしてくれて。


空いたスペースに腰をおろす。



彰吾の前には両親と手を繋ぎながらはしゃぐ子供たちがいて。


景色はあの時と違うのに。