椅子から立ち上がった私は前にいる二人をもう一度見た。 項垂れるように俯く徹と、唇を噛みしめている桃香。 「これで最後だな。もう二度と会う事はないだろうから」 「彰吾!」 弾かれたように顔を上げた徹と彰吾は目を見合わせていて。 彰吾は今日初めて笑みを見せた。 「徹。お前とも今日で最後だ。今までいろいろ世話になったな」 「……」 「徹、今日が最後だ」 グイッと腕を引かれ、彰吾の座っていた椅子に軽く膝をぶつける。 そして…… 伝票を掴もうと手を伸ばすと、一瞬早くそれを桃香の手が押さえた。