「自分の気持ちに正直になることだって必要なんだからね」 「うん。ありがと」 キュッと音がして、水の音が止んだ。 タオルで手を拭いて振り返った母は穏やかに微笑んでいて。 「彰吾君を大切にしなさい」 「――――えっ?」 驚いて目を見開いた私に少し意地悪そうな顔になった母は「実は窓から見えてたの」と言って笑っていた。