だけど、今日は徹との結婚が破談になった話が優先で。


そんな私の気持ちに気付かない母は言葉を続けていた。



「徹君との事があった後なのになんて思ってないわよ?意外とそういう時に見つかったりする事もあるんだし」


「え?」


「身近にいた存在に初めて気付いたとかね」



まるで全てを見てきたのかと思うような母の台詞に、返す言葉なんて見つからなくて。


アルコールで少し顔が赤くなった母をただ見つめていた。



母は2人分の缶を持ってシンクへ行く。


その足取りはしっかりしていて。


背中を向けて缶を洗い始めていて。