それを、ポカンとしながら受け取って、その姿を見つめていると。





「───あ、そうだ」



ふいに何かを思い出したように、動き出した足を止めて、振り向いた。




「一つ、言わなきゃいけないことがあった」



そう切り出すと。





「ねぇ、千秋。

───東条家の養子になる気はない?」





その言葉に、あたしはさらに「は…?」となる。




「あたしのパパが千秋を養子にしたいんだって」


「え…でも、あたしは…」


「そう思うのは知ってるよ。

でも、千秋は夏子さんとは違う」



黒瀬夏子、もとい東条夏子。

あたしの母親だった人。




なんて、言った雅の表情は、とても真剣そのもので。





「───そういうわけだから、
少しは考えておいて」





なんて、次の瞬間には笑うと、再び長い廊下を進んで行った。