「…黒瀬……?」
木村くんのそんな声は、あたしにはもはや聞こえず。
フラフラしながらあたしは二人の間へ入り…
ビッ、と両手を広げて、両者の顔の前で止めた。
「……ちあ、…っ!」
驚いたようにあたしに視線を向けた狐燈はさらに驚き、瞳を歪ませる。
「こんなところで兄弟喧嘩しない!」
これが、今のあたしにとって精一杯の行動だった。
ポカン、とする二匹の妖狐…
プラス木村くんと、たぶん猫鈴さん。
しかし、しばらくしてフ、と笑ったのはライコと呼ばれた妖孤だった。
「千秋さん、貴方は人間だ。」
「……だから…?」
「貴方から見れば、我々は異端にしか見えない」
「そんなこと……っ」
「あるさ」
苦し紛れのあたしの言葉は、簡単に遮られてしまう。


